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今更ですが。仮面ライダーW 第48話 『残されたU/永遠の相棒』(前篇)

「ちょっと死んでみてください。」

翔太郎が殺されてしまう・・・。
フィリップが恐怖に駆られて叫んだ途端、若菜の身体は強い光を放った。若菜はフィリップの精神的苦痛に反応して能力数値が上昇していくのだ。ユートピアは吊り上げていた翔太郎の身体を地面に叩きつけ、狂喜の色を浮かべた。

「仲間を痛めつけられるのが、君の苦痛ですか?」

ユートピアはフィリップをいたぶる様に、ステッキで翔太郎の身体を強く突いた。とりあえず今すぐ殺す気はないらしいが、いつユートピアの気が変わってもおかしくない。その気になれば翔太郎の命など、一撃で消してしまえる力を持っている。危機的な状況には変わりはなかった。

「翔太郎!!今度こそ変身だ!!」

フィリップは必死な形相で叫び、サイクロンメモリを押した。
翔太郎もステッキで抑えつけられながらも内ポケットを探り、ジョーカーメモリを取り出してスイッチに指をかけた。わなわなと震える指先。
翔太郎、お願いだ・・・フィリップは翔太郎を見つめ、必死にそう呼びかけているようだ。
フィリップの依頼を受けた時、どんなに辛い事が待っていたとしても、「お前の為に耐えられない事なんてねぇ」・・・そう答えたはずだった。けれど・・・。

翔太郎は相棒から視線を外し、俯いた。
フィリップが永遠に消えてしまうなんて、耐えられない。
変身など、出来ない。

「翔太郎!!」

若菜の身体が輝き、ユートピアの手にある端末の数値が上がった。

「数字が上向いている。72%・・・もう一声!」

フィリップにさらなる精神的苦痛を与えようと、足元に転がっている翔太郎に向けて、ユートピアはステッキを振り上げた。その時。どこからともなく飛んできた赤い光球が、ユートピアの身体を弾き飛ばした。絶え間なく襲い掛かる光球に彼はじりじりと後退させられ、遂には変身も解けた。

助けに入ったのは意外な人物だった・・・いや、ドーパントと言った方がいいか。
タブー・ドーパントは左手に新たな光球を作り出しながら、加頭を睨みつけた。

「来人!早く若菜を連れて行きなさい!」

タブーの放った攻撃は生身の加頭を直撃し、彼は大きく飛ばされて壁に叩きつけられた。加頭はゆらり・・・と立ち上がり、肩越しに恨みがましい目で冴子を睨んだ。


「冴子姉さん・・・まさか・・・ボク等を助けて・・・?!」
「まさか・・・こいつの方が気に入らなかっただけよ。」

タブーはそっけなくそう言うと、加頭に向かってがむしゃらに光球を連打し始めた。自分の中に澱む思いを叩きつけるかの如く。それとも・・・冴子自身が気付かない、彼女の中にある家族への情愛がそうさせたのか。
タブーの集中攻撃を受けて加頭がいた辺りは激しい炎に包まれた。この業火の中で加頭は生きてはいられないだろう。タブーは攻撃の手を止めた。加頭順は全身から炎を吹き出して燃えながら、ゆっくりと振り返る。駆けつけて来た翔太郎達も我が目を疑った。生身のままタブーの攻撃を受けたのに・・・!!
加頭順は氷の様な冷ややかな目で冴子を睨み、真っ直ぐに近づいてくる。

「私、ショックです、冴子さん。
 死んでいるところですよ?私がNEVERでなかったら。」

死者蘇生兵士NEVER・・・!加頭順は大道克己と同じ、不死の兵士・・・いや、既に死んでいる人間だったのだ!

「この場は逃げなさい!来人!」

タブーは緊張した声でフィリップに声をかけると、加頭に向かって再び畳みかけるように光弾を連射した。だが、加頭は平然とした顔で眉一つ動かさずにユートピアに変身した。

冴子に促され、フィリップ達は大急ぎで意識を失っている若菜と大火傷を負って瀕死状態の竜の元へ戻った。今加頭と戦うのは拙い!とにかく一旦退いて体制を立て直す必要がある。冴子が・・・タブーがユートピアを足止めしている間に!しかし変身したユートピアは重力を操る力を使いタブーの光弾の弾道を歪め、こともなげに距離を詰めて、逆にタブーの身体を己の腕の中に引き寄せた。そして、フィリップの腕の中にいた若菜の身体も、ユートピアの引力に引き寄せられ奪われた。

ユートピアの杖の先から放たれた火球が、両者の間に炎の壁を作る。若菜を取り返そうと炎に向かうフィリップを亜樹子が必死に止め、引き摺るようにして連れて行った。
園崎の美しい姉妹を両手に抱え上げ、人間の姿に戻った加頭順は不敵に微笑んだ

「若菜さんを復活させる為に、来人君には後でゆっくり味わって貰いますよ?
 理想郷の力を。」



まさか加頭順がNEVERだったなんて!大道克己率いる不死軍団が劇場版の中に留まらずに、TVシリーズの方にまで食い込んで来るとは!物凄く贅沢な布石ですよね。劇場版のNEVERたちはとても人間臭くて感情豊かなヤツがいましたけど、堂本剛三とか京水とか京水とか京水とか(笑)大道克己も激しい野心丸出しでしたが、他の2人は、戦いは激しかったけどあまり表情が変わらなかった・・・かな?1回しか見れてないので自信ないですが(涙)自分の命が疑似生命だから、傷つく事も死ぬ事も怖くはないし、だから他人の命や痛みに対しても無感情、無関心になっちゃうんでしょうかねぇ。NEVERってのは。

随分と遅くなりましたが、事実上の最終回・48話のレビューでございます。


ユートピアの攻撃を受けて全身に大火傷を負った照井竜は、瀕死の状態で病院に担ぎ込まれた。竜を乗せたストレッチャーは病院の長い廊下を慌ただしく運ばれて行き、処置室の扉の向こうに消えた。竜に縋り、悲痛な声で名を呼び続けた亜樹子は、医師に押し留められて、翔太郎やフィリップと共に廊下に残された。竜の無事を祈るより他に、今、彼等に出来る事は何もない。



「翔太郎・・・なにか言う事はないのかい・・・!」

フィリップは怒りを含んだ声で翔太郎を責めた。
ユートピアの能力は、人間の希望願望など、生きる為の感情を吸い取って自分の力にする。もしも竜が精神波攻撃に強いタイプの男でなかったら、もっと怖ろしい症状になっていただろう。いや、もっと早くに変身して一緒に戦う事が出来ていたら、あるいは。

「何の事だよ?」

翔太郎は相棒の怒った顔を見上げ、喉に絡みついた言葉を飲み込んで努めて冷静に答えた。途端に、フィリップが声を荒げて翔太郎をなじった。

「君が躊躇ったばかりにこのザマだ!若菜姉さんも救えなかった!!」

「俺はっ!!・・・俺は・・・!」

弾かれたように立ち上がり、翔太郎はやはりなにか言いたげにフィリップを見つめていたが、苦しそうに視線を外す。心配そうに2人の睨みあいを見つめていた亜樹子が、ふとなにかを見つけて拾い上げた。
亜樹子はわざと陽気な調子で手にした野球ボールをポンとフィリップに投げ渡し、

「ほれ!ちょっと2人で話でもしたら?私、先帰って待ってるね。」

と笑顔でそう言うと2人を砂浜に残して帰って行った。
亜樹子、いい女ですね。ああ、彼女は鳴海壮吉の魂を受け継いだ娘で、鳴海探偵事務所の所長なんだなと思いました。おかみさんというか、姐さんというか、なんでも受け止めてくれる、そんなドンと構えた優しさがあります。懐が広くて、深くて、強い。竜もそんな所に惹かれたのかな。



フィリップの手を離れたボールは、弧を描いて翔太郎の手の中へ。そしてまたフィリップへ。それぞれの譲れない思いを乗せて2人の間をボールが行き来する。

「どうせ消えるなら、姉さんを助けてから消えたいんだ。
 なんでわかってくれない・・・?!」

フィリップは自分が消えてしまう運命を受け入れているようだ。だからこそ、最期の願いを翔太郎の手で叶えて欲しい。自分に残された大切な家族を共に救って欲しいと、信頼しあえる唯一無二の相棒だからこそ翔太郎に依頼したのに。フィリップは失望したように翔太郎から目を背け、苛立ちながらボールを放った。

「聞きたくねェ。どうしても飲めねぇっ!!」

翔太郎は思いを吐き出すように叫び、内ポケットから取り出したジョーカーメモリをじっと見つめた。しっくりと掌に馴染むメモリ・・・当たり前のようにフィリップと変身して、ずっと共に戦ってきた。この先も同じ時を共に歩いていけると信じていたのに、突然道は途切れようとしている。あと一歩踏み出したら、フィリップは・・・。

「・・・コイツを挿したら・・・・・・お前が消えちまうって思ったら・・・!!」

悲しみとやるせない憤りに潤む瞳でフィリップを睨みつけ、絞り出すように発した声は震えていた。
翔太郎はボールを握り締め、思いの丈をぶつけるかのように思い切りフィリップに投げつけた。ボールはフィリップの華奢な指を弾いて砂浜に転がる。・・・フィリップを消滅させたくないという翔太郎の切実な思い・・・。
ボールを拾い上げようとするフィリップの手が、緑色の光を発して分解していく。
どう抵抗しても、この運命から逃れる術はないのだ。
そう、どんなに翔太郎の思いが強くても。

「翔太郎・・・・・・。優しさは君の一番の魅力さ。でも・・・
 このままじゃボク、安心して逝けないよ・・・。」

優しくて切ない表情で翔太郎を見つめ、フィリップが悲しそうに言った。
わかっている。翔太郎だって頭ではわかっているのだろう。避けられない運命ならば、せめて相棒としてフィリップの望みを叶えてやるべきなのだと。けれど、割り切れない感情が胸の中に渦巻いて、現実を受け入れることが出来ないでいる。フィリップを失いたくはない。

「なぁ、約束してくれ。
 たとえ一人になっても、君自身の手でこの風都を守り抜くと・・・。」

「約束なんて・・・出来ねぇ・・・。
 俺は・・・自分に自信が持てねぇんだ・・・。」

フィリップに明かした本音。
半人前のハーフボイルドなんてのは、翔太郎自身が一番わかっていた事なのかもしれませんね。



ずーっと気になっていた事があるんです。亜樹子には鳴海壮吉という父が、竜にも父母と妹が登場しました。どちらも家族を殺されてしまい、天涯孤独になってしまいましたけど。亜樹子の母は登場しませんね。既にいないと考えた方が自然かな。そしてフィリップには、訳ありで曰く付きのとんでもない人々ですけど家族がいます。翔太郎だけ、彼の家族に関する描写が無いんですよね。翔太郎自身も語った事が無いし。桐山さんもヒロビVol.37の対談の中で「翔太郎には多分親はいない」とおっしゃってましたね。
こんなにも風都に深い思い入れを持ち、街を愛しているのだから、生まれも育ちも風都なんでしょうね。なのに家族の話はおろか、家の話も一切出てこないのだから、きっと翔太郎は天涯孤独なんですね。

1年間翔太郎を見て来たけど、つらつら思い返してみて彼の素性を何も知らなかった事に愕然としてしまいました。いつから翔太郎は一人なんだろう。親の記憶を持っているのかな。やんちゃをして刃さんに追いかけられていた頃にはもう一人だったのかな。
ちょっかい出せば「このヤロウ」と言いながらもなんやかんやと自分を気にかけて追いかけて来てくれる刃さんは、当時翔太郎にとって一番身近な大人だったのかもしれない。日常茶飯事の追っかけっこは、翔太郎にとって刃さんとのコミュニケーションの形なんでしょうね。

そして一体どういう経緯で鳴海壮吉と出会ったのかわかりませんが、翔太郎にとっておやっさんは、父にも等しい存在だったのかもしれません。鳴海壮吉を慕って探偵事務所に転がりこんで、そこが翔太郎の家になった。しかし、その幸せもビギンズナイトで途切れてしまった。

まだまだおやっさんの後をくっ付いて回って、叱られながら色んな事を教わって、探偵の手伝いをしながら自信をつけていって、いつかはおやっさんのようなカッコいい探偵になるんだと思っていたのかもしれません。まるで理想の父親の背中を追いかける息子の様ですよね。でも自分に自信が付く前に、目指していた背中を失ってしまったんですね。
おやっさんの亡骸を抱いた翔太郎の叫びは、尊敬する師を失った悲しみというよりも、親を亡くした慟哭のようで。翔太郎は2度までも家族を失った事になるんですね。これはキツイです。
おやっさんの遺志を継いで探偵稼業を続けるどころか、ヘタしたら日常生活もままならないほど生きる気力を失くしてしまっていたかもしれません。
フィリップがいたから。

フィリップがいたから、翔太郎は折れずに立ち上がる事が出来たんですね。おやっさんが最期に翔太郎に託した少年。これまで必死に大人たちの背中を追いかけていた翔太郎が、初めて「こいつは俺が救って守ってやらなきゃいけない」と思える存在に出会った。自分自身に自信が持てず、自分が立ってるので精一杯という状態でも、誰かが傍にいれば、その誰かの為に全力以上に頑張れる人間っていますよね。翔太郎はそういう男の子だったんじゃないかな。だからこそ彼は仮面ライダーなのでしょう。

フィリップと出会い、おやっさんに最期の依頼を託されて、翔太郎は初めて自分がこの世に存在する確かな必要性を見出すことが出来た・・・と思うのは考えすぎでしょうか。
おやっさんに託された依頼を・・・フィリップを絶対に守るという決意。最初は使命感だけだったかもしれませんが、自分はフィリップにとって必要な人間・・・という思いが翔太郎自身を救ったのかもしれません。共に戦い、幾多の困難を超えて、2人は唯一無二の相棒になりました。それは翔太郎にとっては”家族”と同じ意味を持っていたかもしれません。

おやっさんの代わりに・・・という意識が翔太郎を奮い立たせ、ハードボイルドという名の鎧に弱い自分を押し込めて、カッコつけて虚勢を張って戦ってこれたのも、フィリップがいたから。
フィリップを失う事は、自分が存在する意味を、生きていく支えを失う事になってしまうという事なんでしょう。
そしてフィリップが消滅したら、翔太郎は3度(みたび)家族を失う事になってしまう。
そんなのは耐えられない。



翔太郎のスタッグフォンが鳴った。刃さんからの着信だった。
翔太郎は咳払いを一つして極まった感情を押し殺すと、いつもの様に出来るだけ面倒臭そうな声を作って電話に出た。

「なんスかぁ~!?今・・・」

「来人君はいますか?」

電話の向こうから聞こえてきたのは、加頭順の無機質で不吉な声だった。フィリップは慌てて翔太郎の手からスタッグフォンを取り、悲痛な声で若菜の安否を尋ねた。

「我が財団所有の天文研究所に。現在数値は・・・78%
 これを100に近づけるために、協力してもらいます。」

「するわけがない・・・!」

「そう言わず、理想郷をお楽しみください・・・。」

加頭順・・・ユートピアは冷たい笑みを浮かべ(ているように見えたものでw)、携帯を通じてフィリップの脳にヴィジョンを送りこんだ。頭を駆け巡る激痛と共に、フィリップの脳裏に再生されたのは、口々にフィリップに助けを求め恐怖に逃げ惑う風都の仲間たちの姿。ユートピアに襲われた者達は皆、生きる為の感情を吸い取られて、顔を失って倒れて行った。
クイーンとエリザベスが!サンタちゃんが!ウォッチャマンが!刃野刑事が!マッキーが!

人がその人として生きてているという象徴が顔・・・という解釈なのかな。それを失くした人間は、抜け殻の様に意味の無い存在になってしまうという事か。精神波攻撃に耐性がないと、こんな悲惨な状態になってしまうのか。

強制的に仲間たちの絶望を見せつけられ、血を吐くような絶叫をし続けたフィリップが、突然プツリと神経の糸が切れたように倒れた。

「まさに私の理想郷・・・ユートピアだ。」

なぜこれが加頭順にとっての理想郷なのか疑問に思ったんですよね。人々から奪い取った生きる希望や願望を自分に取り込んでエネルギーを蓄積する力がユートピアの能力なんですよね。あとには生命エネルギーを吸い取られた人々の抜け殻だけが累々と転がってるだけ。
加頭順がNEVERだから?既に死んでいる彼には、生きる為の希望も願望も無い。空っぽ。だからこそ人々から奪った生きるエネルギーを貯め込んで、その虚ろな空洞を満たしているのかな。自分と同じ様に虚ろな人間が溢れる街は、加頭順にとっては理想郷なのかな。


「ふざけるなぁぁっ!!」

怒りに震えフィリップが叫んだ。ユートピアはさらに楽しそうに、怖ろしい言葉を発した。

「次はさらに大事な人を狙います。今どこにいると思います?
 屋根でクルクルかもめが回ってますよ?」

鳴海探偵事務所!?

「亜樹ちゃんが・・・亜樹ちゃんがユートピアにっ!!」

必死に駈け出すフィリップ。何が起こっているのかわけもわからずにいた翔太郎も、フィリップの言葉に血相を変えてあとに続いた。
だが、2人が駆けつけた時には、事務所の中で亜樹子が変わり果てた姿で倒れていた。そばにスリッパが落ちている。彼女は最後まで抵抗を試みようとしたのだろう。
顔を奪われた亜樹子を抱き締めて慟哭するフィリップの身体が緑色の光を発し、その昂ぶった感情が離れた所に監禁された若菜を刺激する。

「ボクのせいで・・・亜樹ちゃんが・・・!!」

身体を引き裂かれるようなこの上ないフィリップの悲しみ、嘆き、苦悩、絶叫。茫然と見下ろす翔太郎の脳裏に、シュラウドの言葉が甦る。

 あの子が安心して笑顔で消えられるようにして欲しい・・・。

だが自分が変身を躊躇ったばかりに事態は悪化し、目の前のフィリップは絶望に身を捩り、喉も裂けんばかりに泣き叫んでいる。フィリップをこんな表情のまま、消滅の時を迎えさせてしまう事になってもいいのか・・・。

「俺のせいだ・・・。ごめんな・・・フィリップ。」

翔太郎は静かにフィリップに背を向け、ガレージの扉に掛けられていた白い中折れ帽を手に取った。ツバが一カ所裂けたそれは鳴海壮吉の形見。そしてあのビギンズナイトで、おやっさんの手からフィリップと共に翔太郎に遺された鳴海壮吉の魂のだ。これを被るのに相応しい時が来るまでは・・・と、ずっと手にしていなかったが、それはただ単に逃げていただけなのかもしれない。鳴海壮吉の様なハードボイルドな人生を背負う覚悟が出来ないでいただけなのかもしれない。
そんなだから、フィリップを失いたくないという自分の感情に負けて変身出来ずに、こんな事態を招いてしまった。翔太郎は振り返り、緑色に発光して嘆く相棒の背中を見つめた。

ビギンズナイトの夜、鳴海壮吉はこの帽子を翔太郎の頭に乗せて、最初で最期の依頼をした。

そして今、再びこの帽子を被るのだ。相棒の最初で最後の依頼を叶えるために。

白い帽子を深く被り、事務所を後にする翔太郎はハードボイルドな男の顔になっていた。



園咲若菜は暗闇の中を歩いている。その先には父・琉兵衛がいた。

「聞こえるだろう?この地球ほしの嘆きが・・・!」

琉兵衛は闇に浮かぶ地球を指して言った。

「ええ・・・。お父様の嘆きも・・・。だから、私なります!地球の巫女に。」
「若菜!」

琉兵衛は若菜の肩を強く掴み、満足そうな優しい笑みを浮かべた。そして振り返り・・・地球の中に溶け込むようにして消えてしまった。驚き息を飲む若菜の耳に、今度は弟・来人の声が聞こえてくる。

「それが・・・姉さんの決断だったんですね?」

横を見ると、いつの間にか悲しそうな顔をした来人が立っている。

「ごめんよ。もうボクには姉さんを救えない・・・。」

来人の姿は徐々に薄くなり闇に溶けて消えた。

「来人ォォ!!」



若菜は見た事のない施設の冷たい床の上で目覚めた。ここは一体どこなのだろう。不安げに辺りを見回していると、聞きなれた声が聞こえた。

「悪い夢でも見てたようね、若菜。言っておくけど現実はもっとひどいわよ。」

少し離れた床に座っていた園咲冴子は髪をかきあげ、少し疲れたように言った。ずっと意識を失ったままだった若菜には何の事かわからない。だがフィリップの感情の乱れの影響で若菜の身体は絶えず緑色に発光している。おのれの身体の異変に怯えながら、何の事?と姉に問いかけた。
クレイドールの力を衛星で飛ばして、地球規模のガイアインパクトを起こすという加頭の計画に、若菜は憤った。ミュージアムに反旗を翻して出奔した姉が、加頭と共謀して父の計画を横取りしたと決めつけた。
冴子はそんな若菜の言葉を否定もせず、少し悲しそうに小さくため息をついた。
そこへ加頭が現れた。

「さあ、冴子さん。約束を果たす時です。
 出会った時に言いました。あなたが好きで、逆転のチャンスをプレゼントする・・・と。
 達成しました。愛ゆえに。」

相変わらず抑揚のない無感情な口調で加頭が言った。
冴子は加頭に言われて彼の数々の言動を思い起こした。

「好きだからですよ、あなたが。」
「大好きなあなたに傷つかれたら、私、ショックです。」

あれは総て本気だったという事なのか!?冴子は愕然とした。感情がこもっていないから、本気だと思わなかったとよく言われるんです・・・と、加頭は感情のこもらない口調で言った。希望も願望も持たない加頭順が唯一持っていた感情が園咲冴子への愛なのか。冴子の誰よりも強い野望と自己顕示欲に惹かれたのかもしれませんね。

「あなたは工場の場所を敵に教え、そして私を売った。
 でも許します。それはあなたが園咲冴子だからです。」

園咲家の長女にして優秀な頭脳と高い戦闘力を備えた美しい女性。加頭が理想郷を創る為のパートナーとして申し分ない存在・・・ということか。加頭は冴子の前にタブー・メモリを差し出した。
冴子は目を細めてそれを一瞥すると、スイッと視線を逸らした。
ガイアメモリを持つ加頭の手がワナワナと震える。

「なぜです!なぜそこまで私を拒絶するのです!!」

「あなたが園咲を舐めているからよ。」

凛とした美しい横顔には、誇り高い笑みが浮かぶ。

「こんな形で若菜に勝っても、死んだお父様は絶対に認めない!」

キッと強い眼差しで加頭を睨みつけてその手からガイアメモリを奪い取った。冴子の姿を追う加頭の目から彼が言う”愛”の色が消えた。ゾッとするほど無機質で冷酷な瞳。冴子は決心した。

「若菜!逃げなさい!!」

そう叫び、冴子は加頭に殴りかかった。加頭はそれを難なくかわし、表情を変えないまま片腕に冴子を抱きかかえて外へと引き摺っていく。冴子はタブー・メモリを胸元のコネクターに突き立てた。

「お姉様が・・・私を・・・!!」 

なぜ・・・?自分を妬み憎んでいた筈の姉の意外な行動に、若菜は驚きを隠せない。



屋外に出て互いにドーパントの姿で戦う冴子と加頭。いや、戦いなどというものではない。圧倒的な戦闘能力の差に、タブーは一撃も反撃できないまま、殴られ続けている。やがてユートピアはタブーの喉元を締め上げ、高々と片手で吊りあげた。

「さようなら。」

タブーの身体が最後の命の輝きに包まれ、その生命エネルギーはユートピアへと容赦なく流れ込む。やがて光が消えた時、そこにはぐったりと力を失った園咲冴子の身体がぶら下がっていた。
ユートピアは無造作に草むらに投げ捨てた冴子を見下ろし、

「結局は一人の理想郷・・・か。」

と少し寂しそうに呟いた。加頭順は、本当に園咲冴子を愛していたのかもしれない。
それが歪んだ形であっても。

冴子に「逃げろ」と促された若菜は、必死に建物の中を出口を探して急いだ。だが、妹だけでも逃がそうとした冴子の願いもむなしく、若菜はあっけなくユートピアの手に落ちてしまった。


草むらの中に横たわり、冴子は呟いた。

 
 若菜を助けようとして死ぬなんて・・・。

 あんなに憎んでいた妹を・・・・・・最・・・低。


そう言いながらも、冴子の表情は満足そうだった。
家族揃って幸せだった頃の冴子だった。

草を踏みしめて一人の男が冴子に近づいてくる。

「若菜姫は任せろ。」

その声は、最期に冴子の耳に届いただろうか。
もう何も映さなくなった冴子の瞳を、翔太郎はそっと閉じた。



実質上の最終回48話。ここまででようやく半分のレビューを書いたんですが、思いの外長くなってしまいましたので、ここで一旦UPさせていただきます。やっぱり48話は内容が濃いですから、どうしても書きたくなっちゃうんですよね。殆どが手前勝手な妄想ですが。
後半は早めにUPしたいです。すみません。

もうすでにオーズが始まっているというのに。けれど自分的には「やっつけ仕事」と思っておりませんので、全力で書き切りたいと思います。
今更の仮面ライダーのレビューですが、お気が向きましたら読んでくださいませ。

では!後半へ続く。


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路地裏のノラ

Author:路地裏のノラ
高岩成二さんのファンです。
仮面ライダー大好きです。
来世は絶対男に生まれ変わってJAEに入って、仮面ライダーを目指します。

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